人工保育のお話

先日、東京の上野動物園で5年ぶりにジャイアントパンだの赤ちゃんが誕生しましたね。無事にすくすく育ってくれることを祈ります。

動物園で繁殖をしていくうえで、母親が育児することが最良ではありますが、飼育下では時々係員が育てなければならない事があります。新生児が虚弱で哺乳できない場合は、初乳を飲む時間的猶予を与えますが、判断がお子お売れると手遅れになることがあります。新生児の疲労の度合いにもよりますが、24時間以内で人工保育に切り替えるかの判断が必要になってきます。

親が新生児の面倒を見ない場合もありますが、その原因は南山で母親の疲労が激しい、周囲が騒がしく精神的に落ち着かない、育児方法が解らないなどがあります。特に類人猿に多く発生するのが、育児方法が解らず人工保育に切り替えるという事例ですが、これは母親自体が人工保育で育った場合に多く発生します。同種間の親子の絆が重要なキーワードになると考えられます。その他の原因には、同居個体による損傷、泌乳量が少ないなどが原因に挙げられます。

人工保育の方法として、乳母を利用する事があります。近縁種の家畜を利用し、健康で母性愛の強い固体を選定しますが、身長に引き合わせないと新生児を攻撃することがあります。この場合、乳母の尿を新生児に塗り付けて匂いを同化させて認識させる事もあります。(この方法は意外と効果があります。)引き合わせが成功すれば、様々な面倒を乳母が引き受けてくれるので、こちらの手間が省ける事になりますが、寛容な性格の乳母が見つかりにくいという問題点があります。

その他に、介添え哺乳をすることもあります。母親が授乳を嫌ったりする場合、係員が手を貸して新生児を乳につけてやる方法で、うまくいけば数日で自ら育児をするようになりますが、母親の動きを人為的に抑える必要があるので、大きなストレスがかかる可能性があります。

そして、一番多く採用される方法が係員による人口乳の授乳です。家畜用に開発されたものやイヌ・ネコ用ミルクを使いますが、初乳に相当するミルクやジャイアントパンダ用のミルクまで開発されています。

係員は保育する種の母乳成分に近いミルクを選択肢、場合によってはビタミン剤やカルシウム、整腸剤などを添加して与えます。哺乳以外にも、温度や湿度の管理、排泄の手伝い、運動と日光浴など様々な世話をトータルで行なわなければなりません。

人工保育動物は、普段から動物と関わりを持っている飼育係にとって非常に可愛らしく、強い愛情を持って接してしまいがちですが、あまりにも飼育係との絆が強すぎるのも将来的に問題が発生します。(個人的には、猛獣のヨタヨタした子供を守ってやりたい気持ちになり、一番可愛いと思います。)
飼育係にとって人工保育とは、ミルクを与えて飼育するのが最終目的ではなく、離乳して本来の種の群れの一員として社会生活が送れてこそ、人工保育成功なのです。

姫路セントラルパーク動物部 
副園長 坂出 勝