風が強く吹いている

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三浦しをん 著
2006年 新潮社


この小説の題材は、今や日本のお正月の風物詩ともいえる「箱根駅伝」。

物語は、膝の故障でトップランナーへの道を絶たれた寛政大学四年生の清瀬灰二(ハイジ)と、長距離走者として天賦の才を持ちながら孤独に走ることしか知らない蔵原走の出会いから始まります。新入生の走は勧められるまま、ハイジの住む古アパート竹青荘の10番目の住人になります。竹青荘の面々は皆すこぶる個性的で魅力的。そんなある日、突然ハイジがこの10人で箱根駅伝を目指すと言い出します。なんとハイジと走以外は長距離走に関してはほぼ素人、メンバーは控え選手すら選べない10人きり、何より箱根駅伝予選会まで残り半年という状況で!もちろん初めは半信半疑で練習に参加していた竹青荘のメンバー達でしたが、ハイジの情熱に巻き込まれるように、走の美しい走りに魅せられるように、時には衝突を起こしながらも走ることに真剣に取り組み始めます。「速く」だけではない、その向こうにあるそれぞれの「何か」を求めて。さあ、寛政大学は箱根駅伝に出場できるのか-?

かなりムチャな設定のため、読み進めていく中で「そんなに上手く行くわけない」と、現実に立ち返ってしまう瞬間があるかもしれません。しかし、同時に「小説の中だけでも、この愛すべき10人の無謀で真摯な努力と挑戦が叶ったっていいじゃないか!」と、そんな気持ちがどんどん膨らんでいきいます。それだけの強く明るいエネルギーに満ちた作品です。

あわせてもう一つ見どころを。この作品は単行本・文庫ともにカバー挿画を人気画家・山口晃さんが担当しています。特に単行本の表紙は、大和絵の手法を用いて箱根駅伝のコースが鳥瞰で描かれ、そこに登場人物の姿やセリフがちりばめられた大変見ごたえがあるものになっています。

三木市立中央図書館 辻本美保