図書館は逃走中

デイヴィッド・ホワイトハウス 作
堀川志野舞 訳
早川書房


私はこの本のとっても素敵な装丁に思わず引き寄せられました。家の本棚に加えたら素敵なインテリアになりそうなかわいい絵が、もちろん内容とリンクしてちりばめられています。

主人公は家では父親にじゃま者扱いされ、学校ではいじめっ子のターゲットにされ、つらい毎日を過ごしている小学生の男の子ボビー・ヌスク。彼の唯一の友達が、とってもユニークな発想の持主、サニー。2人が企てたビックリな計画が半ば失敗することによって、彼らは離れ離れになってしまい、親友さえも失い更なる苦境に立たされたボビーでしたが、ヴァルとローザという母娘と出逢い、移動図書館の本と出会う事によって、彼が今まで知らなかった世界が広がっていくというのがこの本のストーリーです。

ボビーとサニーの計画が実行されていく過程だけでも、ハラハラどきどきが満載なのですが、サニーと別れて、ちょっと無茶で破滅的な選択を繰り返していくうちに移動図書館での冒険は更なる展開に…。

ボビーには、突然母親がいなくなってからずっと続けているライフワークとも言うべき作業があるのですが、これがまた、けなげで切なく、胸を打ちます。

全体を通して描かれているのは家族の絆でしょうか。登場人物はみんな、血のつながりのある家族に恵まれない境遇にあります。そんな人々が出会って、本当の家族のような愛情や絆を、冒険を通して作っていきます。

絶体絶命のピンチを救うのは、今まさにボビーが読んでいるところの本からヒントを得た作戦です。

ストーリー展開もスリリングで先がとっても気になるのですが、描写が比喩的でとても丁寧で、本当に痛みが感じられたり、とても現実的ではない場面もすんなり受け容れられて、情景が目に浮かんでくるので、早く読み進めたいけれど、じっくり味わって読んでいきたい、そんなジレンマを感じます。

また、移動図書館が舞台ということで、さまざまな文学作品が新旧問わず随所に出てくるのも楽しい魅力です。

三木市立吉川図書館 伊藤 貴子