茨木のり子の家

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茨木のり子 著
平凡社


茨木のり子という詩人をご存じでしょうか?

もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない~

で始まる「倚りかからず」の作者と紹介すれば思い出される方も多いのではないでしょうか。この詩は、作者が七十三歳の時に発表され、詩の本では異例のベストセラーになりました。また、「私が一番きれいだったとき」は、国語の教科書に掲載されています。

では、彼女の詩の魅力でしょうか?
多くの方が「力強さ」を感じると言われますが、その「強さ」は、大胆不敵とか強剛というものではなく、静かに生き抜くしなやかさであり、自分を見失しなわない美しさです。

そんな彼女の生活を垣間見られるのが、この『茨木のり子の家』です。部屋の写真、ポートレート、直筆原稿に添えられた幾篇の詩。最愛の夫を亡くしてからの約三十年は一人での生活になりましたが、夫婦で世話した庭木や年季が入った調度品が共に暮らした十七年の記憶を深めていくようにも感じます。

茨木さんのおうちにお邪魔し、お茶を飲みながら、「生きるって覚悟がいるわよねぇ」なんて話をしてくださっているような錯覚を覚えます。

大正十五年、大阪に生まれ、七十九年間を生き抜いた一人の女の生涯は、特別なものではなく、人が生きる意味を問い続け、その意味を成さんとする生き方は、どの人にも当てはまる命題ではないでしょうか。だからこそ、彼女の言葉は多くの人に寄り添い、励まし、そして、心を動かしてしまうのでしょう。

小野市立図書館 和田真由
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