あなたのために~いのちを支えるスープ~


辰巳 芳子 著
文化出版局


あなたを生かしているものは何ですか?皆さんは何を思い浮かべますか。生命を維持するもの、精神を安らかにするもの、自分を取り巻くすべてのもの等、様々でしょうが、誰にも共通する「食」について思いをめぐらせてみませんか。

この本は、スープ(おつゆ)のレシピ集です。自身のお父様が嚥下困難であったため、介護生活で作り続けられたものが基になっています。和の汁物から洋風スープに至るまで、素材と調理法の組み合わせが丁寧に記されています。料理本でありながら、エッセイのようであり、哲学書のようであり、栄養学、民俗学の書のようでもあります。そして、どのページからも「いのちを支える」という作者の覚悟が溢れています。文中に「身についたものがなくては、いざの時、意のままにならぬ自分を嘆くことになる」とあります。自分の命を守るのも、大切な人を守るのも、人の目に触れぬ内心の仕事の積み重ねだと説きます。忙しいから、面倒だから、難しそうだからと、即時性を優先する生活を繰り返すことは、目に見えない大切なものを失くしているのかもしれません。食事は、素材の命だけでなく、作り手の気持ちも一緒にいただく行為だから、「滋味」という言葉を悟らせてくれるのではないでしょうか。

いつも頑張っている「あなた」のために、「あなた」の大切な人のために、心をこめた一杯のスープを作ってみませんか。

小野市立図書館 和田真由